「乳歯のむし歯は放っておいてもいい」は大きな誤解
「どうせ抜けるから」「痛くないようだから大丈夫」
乳歯の虫歯に対して、そうお考えの保護者の方は少なくありません。
しかし実際には、乳歯のむし歯は永久歯やお子さまの将来にまで深刻な影響を及ぼす可能性があります。
乳歯はエナメル質や象牙質が薄く、虫歯の進行が早いのが特徴です。
初期段階では痛みを訴えないことが多いため、気付いたときには神経まで達しているケースも珍しくありません。
乳歯むし歯が与える5つの悪影響
- 永久歯への感染リスク:乳歯の根の先にある永久歯の芽(歯胚)に炎症が及ぶと、形成不全・変色などを引き起こします。
- 噛む力の低下と発育不良:痛みや噛みにくさから、栄養摂取が偏り、顎の成長にも悪影響。
- 歯並び・咬み合わせの乱れ:乳歯を早期に失うと、隣の歯が倒れ込むなどして永久歯が正しく並ばなくなります。
- 発音・言語発達への影響:前歯や奥歯の欠損は、正しい発音習得を妨げます。
- 歯医者への恐怖心が形成されやすい:急な痛みや強い処置は、長期的なトラウマになることも。
乳歯のむし歯の進行と症状
乳歯のむし歯は、黒くならないケースも多く、白濁や小さな穴から始まるため、保護者が気付きにくい特徴があります。
また進行が速く、以下のような経過をたどることが多く見られます。
- 初期むし歯(C0〜C1):歯の表面が白く濁る/痛みなし
- 中等度(C2):象牙質に達し、冷たい物でしみる/自覚症状あり
- 高度(C3〜C4):神経まで進行/夜間痛や腫れ、膿などが発生
子どもは痛みに対する感受性が強いため、治療を嫌がる原因になりやすく、その結果さらに症状が進んでしまうという悪循環に陥ることもあります。
乳歯むし歯の主な治療法
1. フッ素塗布・経過観察(初期むし歯)
エナメル質表面の初期虫歯であれば、削らずにフッ素塗布と生活習慣の改善で再石灰化を促すことが可能です。
2. コンポジットレジン修復
穴の開いた小さな虫歯に対しては、削ったあとに白い樹脂を詰める治療を行います。
保険適用で処置でき、審美性にも優れています。
3. 神経の処置(生活歯髄切断・根管治療)
虫歯が神経まで達している場合は、感染した神経の一部または全部を取り除き、薬剤で封鎖します。
特に根の先に永久歯の歯胚がある乳歯では、治療法を慎重に選ぶ必要があります。
4. 銀歯(クラウン)や抜歯
歯質の欠損が大きい場合は、金属冠をかぶせる処置(乳歯冠)を行うことがあります。
根まで崩壊した場合は、やむを得ず抜歯し、スペース確保のために保隙装置を装着します。
当院の治療方針と特徴
- できる限り削らない・抜かないMI(最小限侵襲)方針
- 子どもに優しいトレーニング型対応(Tell-Show-Do法)
- 保護者への事前説明と同意を徹底
- 処置だけでなく予防プランをセットでご提案
- 必要時は小児専門医や矯正医と連携した包括管理
むし歯を作らないためにできること
- 3〜4ヶ月ごとの定期検診
- フッ素塗布・シーラント処置の継続
- 1日2〜3回の仕上げ磨き(特に寝る前)
- おやつやジュースの回数・内容の見直し
- 口呼吸や指しゃぶりなどの習癖の改善
むし歯ゼロを目指すには、「予防を続ける仕組み」=通院習慣・家庭でのケア・生活管理の3本柱が必要です。
よくあるご質問
乳歯も「大切な歯」、早期発見・早期対応を
乳歯は一時的なものと思われがちですが、「一生使う永久歯の土台」です。
健康な永久歯列・正しい噛み合わせ・口腔習慣の確立のために、乳歯期のケアこそが最も重要です。
「あれ?」と気づいたら、すぐに受診を。
当院では、お子さまが怖がらず、楽しく通える環境で、乳歯のむし歯治療から予防までをしっかりサポートいたします。