あごに違和感を覚えたら要注意
顎関節症の主な症状
顎関節症(がくかんせつしょう)は、あごの関節や咀嚼筋(噛む筋肉)に異常が生じる疾患で、以下のような症状が見られます。
- 口を開けるとあごの関節がカクカク鳴る
- あごの痛みやだるさを感じる
- 口が開きづらくなってきた
- 開け閉め時に左右にズレる感じがする
日本人の約2人に1人が一度は経験すると言われる非常に一般的な疾患ですが、放置することで悪化することもあるため、早期の診断と対応が重要です。
放置するとどうなる?
症状が軽度であっても、慢性的な開口障害・頭痛・首肩こりなどを引き起こすことがあります。さらに習慣的な歯ぎしりやくいしばりが加わると、歯の破折・歯周病の悪化・インプラントの脱落などにもつながる恐れがあるため、注意が必要です。
原因はひとつではない?顎関節症の多因子性
噛み合わせの乱れ(咬合因子)
顎関節症の原因のひとつが、上下の歯の噛み合わせの不調和です。被せ物や矯正治療後にわずかに噛み合わせがズレることで、あごの筋肉や関節に過剰な負担がかかることがあります。
ストレス・筋緊張(心因性要因)
ストレスによって噛み締めや無意識の筋緊張が続くと、顎関節や咀嚼筋に影響を及ぼすことがあります。現代人に多い「心因性顎関節症」もこの一種です。
歯ぎしり・くいしばり(ブラキシズム)
就寝中の歯ぎしり(グラインディング)やくいしばり(クレンチング)は、顎関節に数百kg単位の負担をかけるとされ、筋肉の疲労や関節円板のずれを引き起こします。
生活習慣・姿勢・TCH(歯列接触癖)
パソコン作業中の前傾姿勢や、長時間のスマホ使用・頬杖・うつぶせ寝なども、顎関節に影響を与えると考えられています。さらに、無意識に上下の歯を接触させ続けるTCH(Tooth Contacting Habit)も原因のひとつです。
顎関節症の診断と検査
顎関節の視診・触診・開口量の測定
診療ではまず、口の開け閉め時の動きやクリック音、関節の痛み、開口距離(正常は40mm前後)などを視診・触診でチェックします。
レントゲン・CTによる関節評価
顎関節の骨の状態や変形、関節円板の位置などを評価するために、パノラマX線や歯科用CTを活用します。必要に応じて、大学病院と連携しMRIによる精密診断を行うことも可能です。
音やクリック音の評価
顎の関節音は、関節円板のズレや変位のサインである場合があります。音が出るからといって必ずしも治療が必要とは限りませんが、痛みや開口障害を伴う場合は積極的な治療が必要です。
当院で行う顎関節症の治療
スプリント療法(マウスピース)
顎関節症の治療法として最も一般的なのが、スプリント療法です。夜間に装着する透明なマウスピースで、関節や筋肉の負担を軽減し、咬合の安定化を図ります。
噛み合わせ調整(咬合調整)
詰め物や被せ物によってわずかに噛み合わせがずれている場合は、高すぎる部分を調整することで改善することがあります。咬合紙やシリコン咬合検査を用いて評価します。
生活習慣の指導とTCH是正
TCH(歯列接触癖)は、日中無意識に上下の歯を接触させ続けている状態です。当院ではTCH是正プログラムを用いて、定期的な自己観察と生活習慣の見直しを促します。
理学療法・筋マッサージ・温罨法
顎関節周囲の筋肉の緊張を緩和するために、顔や咬筋のマッサージ、温める処置(温罨法)を指導します。痛みが強い場合は鎮痛薬や筋弛緩薬を併用することもあります。
ボツリヌス療法・専門医との連携
歯ぎしり・くいしばりが極めて強い場合には、咬筋へのボツリヌストキシン注射(自費治療)も選択肢のひとつです。必要に応じて顎関節専門の大学病院口腔外科やペインクリニックと連携して治療にあたります。
顎関節症に関するよくあるご質問(FAQ)
自己判断せず、歯科医師の診断を
顎関節症は、さまざまな要因が複雑に絡み合う疾患です。痛みが軽いからといって放置すると、慢性化・習慣化・日常生活への支障に発展することもあります。
当院では、CTによる精密診断・多角的な評価・各種治療法の組み合わせにより、根本的な改善を目指した顎関節症治療を提供しています。