歯周病は「沈黙の病気」 ~ 成人の約8割が罹患
歯周病(歯槽膿漏)は、細菌感染によって歯を支える骨(歯槽骨)や歯ぐきが破壊される病気です。
初期には自覚症状が少なく、知らぬ間に進行することから「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」とも呼ばれています。
厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」によると、成人の約8割が歯周病に罹患しているとされ、日本人が歯を失う最も大きな原因は「むし歯」ではなく「歯周病」です。
出典:厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査報告
歯周病の進行ステージと主な症状
分類 | 主な症状 | 治療内容 |
---|---|---|
歯肉炎 | 歯ぐきの腫れ・出血/痛みなし | ブラッシング指導/PMTC |
軽度歯周炎 | 歯周ポケット3~4mm/出血・口臭 | スケーリング(歯石除去) |
中等度歯周炎 | ポケット4~6mm/歯のぐらつき | ルートプレーニング/薬物療法 |
重度歯周炎 | 歯の動揺/排膿/咬合異常 | 歯周外科手術/再生療法など |
当院の歯周病治療の特徴
- 歯周病検査(6点法/ポケット・出血・動揺など)で進行度を可視化
- 歯科用CTによる骨吸収の三次元診断
- 細菌検査・バイオフィルム解析による原因菌の把握
- 位相差顕微鏡による口腔内細菌の動態観察
- 症例ごとの個別プログラムによる予防・治療設計
主な治療法と技術
スケーリング(歯石除去)
専用の超音波器具やキュレットを用いて、歯面や歯周ポケット内の歯石を除去します。
痛みに配慮した処置と徹底した洗浄で、歯周病の進行を止める第一歩となります。
ルートプレーニング(SRP)
歯根面に付着した感染物質(歯石・細菌)を滑沢化しながら除去し、再付着を防ぐ処置です。
ポケットが深い部位では局所麻酔を使用することもあります。
歯周内科療法
位相差顕微鏡で歯周病菌を特定し、抗菌薬や3DS除菌(ドラッグデリバリー)を用いて体内から菌を抑制する治療です。
再発を繰り返す重症患者に有効です。
LAPT(レーザー歯周治療)
半導体レーザーを用い、歯周ポケット内部の殺菌・蒸散・組織活性化を行います。
切開を伴わないため、痛みが少なく治癒も早いのが特長です。
歯周組織再生療法(エムドゲイン・リグロス)
歯周病で失われた骨や歯根膜の再生を目指す高度な治療です。
CT・歯周検査により適応部位を判断し、再生誘導剤を用いて失われた組織の回復を図ります。
歯周病と全身疾患の関係
近年の研究では、歯周病が糖尿病・心筋梗塞・脳梗塞・早産・誤嚥性肺炎・認知症などと関連していることが明らかになっています。
日本歯周病学会では「歯周病は全身の健康に影響する炎症性疾患」と位置づけられており、
単なる「お口の問題」ではなく、生活習慣病のひとつとして捉える必要があります。
参考:日本歯周病学会ガイドライン/J Periodontol. 2009;80:1222-1229.
歯周病の予防と再発防止
- 毎日のセルフケア(正しいブラッシング・補助器具の活用)
- 定期的なプロフェッショナルケア(3~6ヶ月に1回の検診)
- 生活習慣の見直し(喫煙・食生活・ストレス管理)
- 継続的な歯周病管理プログラム(SPT)
歯周病は治療後の再発が非常に多い疾患です。治療と予防を継続することが、歯を守る鍵となります。
歯周病は「治す病気」から「コントロールする病気」へ
歯周病は一度進行すると、完全な治癒が難しい場合もあります。
しかし、早期発見・早期介入・適切な管理により、進行を止め、健康な口腔を維持することが可能です。
しげ歯科・矯正歯科 水巻院では、科学的根拠に基づいた精密な診断と治療により、患者さまの口腔と全身の健康を長期的に守る歯周病ケアを提供しています。
歯周組織再生療法の症例紹介
当院では、エムドゲインやリグロスなどの再生誘導材料を用いて、
歯周病によって失われた歯槽骨・歯根膜・セメント質の回復を図る治療を行っております。
【症例】40代女性/下顎第一大臼歯部の垂直性骨欠損
- 初診時:歯周ポケット7mm/出血あり/X線上で垂直性骨吸収を確認
- 治療:SRP後、再評価のうえエムドゲイン併用再生療法を実施
- 結果:6ヶ月後、ポケット2mm/出血なし/骨再生をX線で確認
治療前・後のレントゲン写真(比較画像)や、治癒経過の写真を掲載することで、患者様の理解が深まります。
歯周病と全身疾患の相関性(エビデンスベース)
米国疾病予防管理センター(CDC)による報告では、歯周病と糖尿病・心疾患・認知症との関連が数多く報告されています。
- 糖尿病患者の約60%が歯周病を併発(相互悪化関係)
- 歯周病は冠動脈疾患・脳卒中のリスクを約1.5倍に上昇させる
- 高齢者では、歯周病による慢性炎症が認知症の進行因子となることも示唆
歯周病治療は口腔内だけでなく、全身の健康を守る第一歩でもあります。
高血糖コントロールや心血管系疾患のリスク管理にも寄与します。
よくあるご質問(歯ぐきに関するお悩み)
定期的な検査で状態を把握することが重要です。
状態により、歯周形成外科や再生療法で改善できる場合があります。
歯ブラシ時の出血が続く場合は、早期に診査を受けることをおすすめします。