口腔がんとは?

口の中にも「がん」ができる

「がん」と聞くと内臓の病気をイメージされる方が多いですが、口の中(口腔)にもがんが発生します。これが「口腔がん」です。
舌・歯ぐき・頬の粘膜・口蓋・口底(舌の下)などに発症し、早期では自覚症状が乏しいため、発見が遅れやすいという特徴があります。

舌がん・歯肉がん・頬粘膜がんなど部位別の特徴

口腔がんの中で最も多いのは舌がん(約60%)です。特に舌の側面に多く発生します。
そのほかにも、歯ぐき(歯肉がん)・頬粘膜・口蓋・舌の下(口底がん)などにも生じます。

見た目が口内炎や粘膜の炎症と似ているため、患者自身が病変に気づきにくいことが問題です。

口腔がんの現状と課題

日本では診断が遅れがち

厚生労働省の調査によると、日本では口腔がんの5年生存率が約50〜60%と、他の先進国に比べて低い傾向があります。
その理由は、発見が遅れることにあります。初期症状が軽いために受診が遅れたり、見逃されたりするケースが多いのです。

進行してから見つかると治療の負担が大きい

進行した口腔がんでは、外科手術で顎の一部を切除しなければならないこともあります。
その結果、発音や咀嚼・嚥下などの機能に重大な障害が残ることも少なくありません。
早期に発見できれば、負担の少ない治療で完治する可能性が高くなります。

口腔がんの初期症状に注意

「治らない口内炎」は要注意

通常の口内炎は1〜2週間で自然に治癒しますが、2週間以上治らない・徐々に大きくなる・出血しやすい・硬いといった特徴がある場合は、口腔がんの初期症状の可能性があります。

白板症・紅板症などの前がん病変

白く変色した「白板症」や、赤くただれた「紅板症」は前がん病変とされ、がん化のリスクを含んでいます
特に紅板症はがん化率が高く、早期に切除・経過観察が必要です。

歯科定期検診での早期発見の重要性

初期の口腔がんは自覚症状がないため、定期的に歯科医院で専門的な視診・触診を受けることが、早期発見の鍵となります。
検診によって偶然発見されるケースも少なくありません。

当院の口腔がん検診の流れ

視診・触診・問診

医師が舌・頬・口底・歯ぐき・上顎・口唇などをすべてチェックし、必要に応じて首のリンパ節の腫れなども確認します。
自覚症状がある方には、その部位を中心に精密に観察を行います。

必要に応じて精密検査へ

疑わしい病変がある場合は、専門機関への紹介や組織検査(生検)を行います。
また、特殊な染色剤や蛍光観察装置(VELscope®など)による精査も可能です。

高リスク者への定期的なモニタリング

喫煙者・飲酒量が多い方・義歯や被せ物の不適合がある方などは、年に1回以上の定期検診を推奨しています。
前がん病変や疑わしい部位の経過観察も、画像記録や診断記録を用いて行います。

口腔がんを防ぐためにできること

生活習慣(喫煙・飲酒)の見直し

口腔がんの最も大きな危険因子は、喫煙・過度の飲酒・ウイルス感染(HPVなど)です。
禁煙・節酒に取り組むことで、発症リスクを大幅に低減できます。

適切な義歯や補綴物の管理

合っていない義歯や鋭利な詰め物が、粘膜を慢性的に刺激することでがんの誘因となることがあります。
適切な補綴管理・再製作・調整が重要です。

自己チェックの方法

鏡の前で月に1回程度、舌の側面や頬粘膜・口底・口唇内側などを観察してみてください。
「白い」「赤い」「硬い」「治らない」「出血する」「しこりがある」といった異常があれば、すぐに受診してください。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 口腔がん検診は何歳くらいから受けたほうが良いですか?
A. 一般的には40歳以降の方に推奨されていますが、喫煙・飲酒・口内炎の繰り返しがある方は、若年層でも受けるべきです。
Q. 健康保険は使えますか?
A. 症状があり医師の判断で検査を行う場合は保険適用されますが、無症状でのスクリーニング検診は自費診療になります(3,000〜5,000円程度)。
Q. どんな検査をするのですか?
A. 視診・触診・問診が基本で、異常がある場合は、染色・蛍光観察・病理検査・画像診断へと進みます。
痛みを伴う検査は原則ありません。

口腔がんは「早期発見・早期治療」が命を守る

口腔がんは、初期に発見すれば治療成功率が非常に高いがんです。
しかし、多くの方が「ただの口内炎」「ストレスによる口のトラブル」と思い込み、受診が遅れる傾向があります。

当院では、経験豊富な歯科医師が定期的なチェックを実施し、必要に応じて大学病院など高次医療機関への紹介を行っています。
ご自身やご家族の健康を守るためにも、ぜひ口腔がん検診をご活用ください。

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