多数の歯を失った方の固定式インプラント

ボーンアンカードブリッジとは、顎の骨に埋入した複数本のインプラントを支えとして、片顎全体または広い範囲の人工歯を固定する治療方法です。

患者さまご自身では取り外さない固定式の人工歯であり、歯科医師が必要に応じて取り外せるよう、スクリューで固定する設計が一般的です。専門的には「インプラント支持固定性補綴装置」または「術者可撤式インプラント補綴装置」と呼ばれることがあります。

重度の虫歯や歯周病などによって多くの歯を失っている方、総入れ歯が動いて噛みにくい方、取り外し式ではなく固定式の歯を希望される方にとって、検討できる治療方法の一つです。

ただし、残っている歯の状態、顎骨の量と質、歯ぐきや口唇の形態、噛み合わせ、全身状態、清掃能力などによって適切な設計は異なります。固定式がすべての方に適しているわけではないため、歯科用CTなどを用いた検査と総合的な診断が必要です。

ボーンアンカードブリッジとは

複数本のインプラントで連結した人工歯を支える治療

すべての歯を失った場合でも、失った歯と同じ本数のインプラントを埵入する必要があるとは限りません。顎骨の状態や噛み合わせを確認し、適切に配置した複数本のインプラントで、一体化または分割された人工歯列を支えることができます。

使用するインプラントの本数は、顎骨の状態、上顎か下顎か、人工歯の設計、噛む力、将来的な修理やメンテナンスのしやすさなどを考慮して決定します。

片顎全体を一つの固定式補綴装置で支える場合、4本以上のインプラントを適切に分散して配置する設計が検討されます。ただし、4本で支えることを優先するのではなく、長期的な安定性や将来一部のインプラントに問題が生じた場合まで考慮して本数を決定することが重要です。

POINT

ボーンアンカードブリッジは特定の商品名ではなく、複数本のインプラントで広い範囲の固定式人工歯を支える補綴方法の総称として使われます。

患者さまは取り外さず、歯科医師が管理する固定式装置

ボーンアンカードブリッジは、通常の総入れ歯のように患者さまが毎日取り外す装置ではありません。人工歯はインプラントに固定されているため、食事や会話の際に動きにくいことが特徴です。

一方、固定式であっても永久に取り外せないわけではありません。スクリュー固定式の場合、歯科医師が必要に応じて補綴装置を取り外し、内部の確認、清掃、修理などを行える設計にできます。

オールオン4・インプラント入れ歯との違い

固定式補綴の総称

ボーンアンカードブリッジ

複数本のインプラントを用いて、片顎全体または広い範囲の連結した人工歯を固定する治療です。インプラントの本数や配置は症例ごとに設計します。

代表的な設計方法

オールオン4

片顎に原則4本のインプラントを配置して、全体の固定式人工歯を支える治療方法です。オールオン4は、ボーンアンカードブリッジに含まれる設計方法の一つと考えられます。

患者さまが取り外せる

インプラント入れ歯

インプラントを固定源として入れ歯を安定させる治療です。使用中は動きにくくなりますが、患者さまご自身で取り外して清掃します。

比較項目 ボーンアンカードブリッジ インプラント入れ歯 総入れ歯
装置の形式 固定式 取り外し式 取り外し式
主な支持 インプラント インプラントと粘膜 粘膜
日常的な着脱 原則不要 必要 必要
外科手術 必要 必要 不要
清掃方法 人工歯の下を専用器具で清掃 取り外して清掃 取り外して清掃
費用 自由診療で比較的高額 自由診療 保険診療または自由診療

※どの治療方法が適しているかは、顎骨、歯ぐき、口元の形態、噛み合わせ、全身状態、ご希望などによって異なります。

ボーンアンカードブリッジを検討できる方

検討対象となる主な状態

  • 上下いずれかの歯をすべて失っている
  • 多くの歯が重度の虫歯や歯周病で保存困難と診断された
  • 総入れ歯が動く、外れる、噛みにくい
  • 取り外し式の入れ歯に強い抵抗がある
  • 複数本の歯を失い、固定式の治療を希望している
  • 残存歯を含めて噛み合わせ全体の再構築が必要である

慎重な判断が必要な状態

  • 重度の歯周病や口腔内の感染が残っている
  • 糖尿病などの全身疾患が十分に管理されていない
  • 骨粗しょう症治療薬など、手術に影響する薬を服用している
  • 喫煙習慣がある
  • 強い歯ぎしりや食いしばりがある
  • 毎日の清掃や定期的なメンテナンスが難しい
  • インプラントを支える顎骨が著しく不足している

残っている歯を抜くかどうかは慎重に判断します

ボーンアンカードブリッジを行うために、残っている歯を一律に抜歯するわけではありません。治療可能な歯や長期的に維持できる可能性がある歯については、保存できるかどうかを検討します。

一方、重度の歯周病、歯根破折、大きな虫歯などによって予後が見込めない歯を無理に残すと、感染や噛み合わせの不安定化につながることがあります。歯単位ではなく、口腔全体の治療計画として判断する必要があります。

上顎では口元の支えも確認します

上顎の総入れ歯には、失われた歯ぐきや顎骨を補い、唇を内側から支える役割があります。固定式のボーンアンカードブリッジに変更すると、入れ歯の床部分がなくなることで、口唇のふくらみや顔貌の印象が変化する場合があります。

そのため、上顎では噛む機能だけでなく、歯の見える量、歯ぐきの位置、発音、口唇の支えなどを事前に確認します。固定式よりもインプラント入れ歯などの取り外し式補綴装置が適している場合もあります。

ボーンアンカードブリッジの特徴

01

固定式の人工歯

患者さまご自身による日常的な取り外しは不要です。食事や会話の際に装置が動きにくく、入れ歯の着脱に抵抗がある方にも検討できます。

02

複数の歯を一体的に回復

少数の歯の欠損だけでなく、片顎全体に及ぶ多数歯欠損にも対応できる可能性があります。歯の形、歯列、噛み合わせを総合的に設計します。

03

インプラント本数を個別に設計

失った歯と同じ本数のインプラントを埋入するのではなく、顎骨の状態や補綴設計に応じて必要な本数と配置を決定します。

04

歯科医師による取り外しが可能

スクリュー固定式では、必要に応じて歯科医師が人工歯を取り外し、清掃、点検、修理などを行える場合があります。

固定式にも清掃と修理が必要です

固定式であることは、メンテナンスが不要という意味ではありません。人工歯と歯ぐきの間には、清掃のための空間を設ける必要があります。その部分に食べ物やプラークが残ると、粘膜の炎症やインプラント周囲炎につながる可能性があります。

また、人工歯の摩耗や欠け、スクリューの緩み、補綴装置の破損などが起こることもあります。定期的な噛み合わせの確認と、必要に応じた修理や部品交換が必要です。

当院の診査・治療計画

歯科用CTによる立体的な確認

歯科用CTを用いて、顎骨の幅や高さ、骨の形態、神経や上顎洞の位置などを立体的に確認します。インプラントを埋入できる位置だけでなく、最終的な人工歯をどの位置に設計するかを考慮して治療計画を立案します。

残存歯・歯周病・噛み合わせを含めた診断

インプラントだけを確認するのではなく、残っている歯の保存可能性、歯周病、顎関節、噛み合わせ、清掃状態などを確認します。口腔内に感染がある場合は、インプラント手術より先に歯周病治療や必要な処置を行うことがあります。

最終的な人工歯から逆算した設計

インプラントは、骨が存在する場所だけを基準に埋入するものではありません。歯の位置、噛み合わせ、発音、清掃性、口元の見え方を考慮し、最終的な人工歯の設計から逆算してインプラントの位置を検討します。

サージカルガイドの活用

症例に応じて、CTデータと補綴設計をもとにサージカルガイドを製作します。計画した位置や角度を手術時に確認しやすくするための補助装置です。

ただし、サージカルガイドを使用しても外科手術のリスクがなくなるわけではありません。実際の骨や歯ぐきの状態を確認しながら、安全性に配慮して処置を進めます。

ボーンアンカードブリッジ治療の流れ

STEP 01

初診・カウンセリング

現在のお悩み、入れ歯の使用状況、食事や見た目に関するご希望、治療に対する不安などを確認します。

STEP 02

精密検査

口腔内診査、歯周組織検査、レントゲン撮影、歯科用CT撮影、噛み合わせの検査、口腔内写真などを行います。全身疾患や服用薬についても確認します。

STEP 03

治療計画とお見積もり

保存する歯と抜歯が必要な歯、インプラントの本数と位置、仮歯、骨造成の必要性、最終補綴物、治療期間、費用、リスクについて説明します。

STEP 04

感染源の治療・事前処置

歯周病や虫歯などの感染がある場合は、必要な治療を先に行います。症例によっては、治療用の仮歯や仮入れ歯を用いて噛み合わせを確認します。

STEP 05

インプラント埋入手術

局所麻酔を行い、計画した位置にインプラントを埋入します。残存歯の抜歯、骨造成、歯ぐきの処置などを同時に行う場合があります。

STEP 06

仮歯の装着

インプラントの初期固定や噛み合わせなどの条件を満たす場合は、手術当日または早期に固定式の仮歯を装着できることがあります。条件を満たさない場合は、治癒を待ってから固定式の歯を装着します。

STEP 07

治癒期間・仮歯の調整

インプラントと骨が安定するまで経過を確認します。仮歯を使用しながら、噛み合わせ、清掃性、発音、歯の形、口元の見え方などを調整します。

STEP 08

最終補綴物の装着

仮歯で確認した内容をもとに、最終的なボーンアンカードブリッジを製作して装着します。装着後に噛み合わせと清掃方法を確認します。

STEP 09

定期メンテナンス

インプラント、歯ぐき、人工歯、スクリュー、噛み合わせ、清掃状態などを定期的に確認します。

治療後の清掃とメンテナンス

人工歯の下まで清掃する必要があります

ボーンアンカードブリッジは固定式ですが、人工歯と歯ぐきの間には清掃が必要な部分があります。通常の歯ブラシだけでは届きにくいため、歯間ブラシ、タフトブラシ、スーパーフロス、口腔洗浄器などを状態に応じて使用します。

清掃方法は、人工歯の形態や歯ぐきとの間隔によって異なります。治療後に歯科衛生士が使用する器具と清掃方法をご説明します。

インプラント周囲炎を予防するための定期管理

インプラントの周囲にプラークが蓄積すると、歯ぐきの炎症やインプラント周囲炎が生じることがあります。進行すると、インプラントを支える骨が減少し、インプラントや補綴装置を維持できなくなる場合があります。

定期メンテナンスでは、歯ぐきの炎症、出血、排膿、骨の変化、人工歯の破損、スクリューの緩み、噛み合わせなどを確認します。必要に応じて、歯科医師が補綴装置を取り外して清掃や点検を行うことがあります。

費用・治療期間・通院回数

標準的な費用の目安

インプラント術前検査
11,000円(税込)
ALL on4~8
3,300,000円(税込)
ALL on4+スタッカブルガイド
4,400,000円(税込)
静脈内鎮静
77,000円(税込)~
骨造成再生療法(必要な場合)
165,000円(税込)

※2026年7月現在の料金です。インプラントの本数、仮歯や最終補綴物の材料、抜歯、骨造成、歯周外科、静脈内鎮静などの有無によって総額は異なります。検査後に治療計画とお見積もりをご提示します。

標準的な治療期間

約3~12か月

抜歯、骨造成、感染の治療、インプラントと骨の結合状態などによって延長する場合があります。

標準的な通院回数

約10~20回

検査、事前治療、手術、仮歯の調整、最終補綴物の製作など、治療内容によって異なります。

ボーンアンカードブリッジは、公的医療保険が適用されない自由診療です。治療開始前に、必要となる治療内容、費用、治療期間、リスクについてご説明します。

詳しい料金は、料金表(自由診療)もご確認ください。

リスク・副作用・注意点

  • インプラント埋入には外科手術が必要です。
  • 手術後に痛み、腫れ、出血、内出血などが生じることがあります。
  • 手術部位に感染が生じることがあります。
  • 下顎の神経に影響し、唇や顎などに知覚異常やしびれが生じる可能性があります。
  • 上顎洞や鼻腔に近い部位では、上顎洞炎や粘膜損傷などが生じる可能性があります。
  • インプラントと骨が十分に結合せず、インプラントの除去や再手術が必要になる場合があります。
  • 顎骨が不足している場合は、骨造成などの追加処置が必要になることがあります。
  • 清掃不良などによってインプラント周囲炎が生じ、骨吸収やインプラント脱落につながることがあります。
  • 人工歯の欠け、摩耗、破折、スクリューの緩みや破損などが起こることがあります。
  • 強い歯ぎしりや食いしばりによって、人工歯やインプラントに過度な力が加わることがあります。
  • 手術当日または早期に固定式の仮歯を装着できない場合があります。
  • 治療後も定期的なメンテナンス、清掃、修理、部品交換などが必要です。
  • 喫煙、糖尿病、歯周病、全身疾患、服用薬などによって治療結果に影響が生じる場合があります。
  • 上顎では、固定式の人工歯に変更することで口唇の支えや顔貌の印象が変化する場合があります。
  • 治療期間、治療結果、使用できる期間には個人差があります。

ボーンアンカードブリッジのよくあるご質問

ボーンアンカードブリッジとオールオン4は同じですか?

完全に同じ意味ではありません。ボーンアンカードブリッジは、複数本のインプラントで広い範囲の固定式人工歯を支える治療の総称です。オールオン4は、原則4本のインプラントで片顎全体の人工歯を支える設計方法の一つです。

手術当日に固定式の歯が入りますか?

インプラントの初期固定、骨の状態、噛み合わせ、埋入本数などの条件を満たす場合は、手術当日または早期に固定式の仮歯を装着できることがあります。ただし、すべての症例で行えるわけではありません。

残っている歯はすべて抜歯しますか?

一律にすべて抜歯するわけではありません。残っている歯の保存可能性や長期的な予後を確認し、保存する歯と抜歯が必要な歯を判断します。

自分で取り外せますか?

原則として患者さまご自身では取り外しません。スクリュー固定式の場合は、点検や修理などが必要な際に歯科医師が取り外します。

総入れ歯よりも清掃は簡単ですか?

固定式のため取り外して洗うことはできません。人工歯の下に汚れが残らないよう、歯間ブラシ、タフトブラシ、スーパーフロスなどを使った清掃が必要です。

インプラントが1本だけ悪くなった場合はどうなりますか?

問題の程度、残っているインプラントの本数と配置、補綴装置の設計などによって対応が異なります。補綴装置の修理で対応できる場合もあれば、インプラントの除去や追加治療、補綴装置の再製作が必要になる場合もあります。

高齢でも治療できますか?

年齢だけで治療の可否を決めるものではありません。全身状態、服用薬、顎骨、口腔衛生状態、治療後の清掃や通院が可能かどうかなどを確認して判断します。

固定式の歯をご希望の方へ

多数の歯を失った場合の治療方法には、ボーンアンカードブリッジだけでなく、オールオン4、インプラント入れ歯、総入れ歯、残存歯を利用した治療など、複数の選択肢があります。

固定式であることだけを優先するのではなく、噛む機能、見た目、発音、清掃性、身体的負担、費用、将来的な修理や管理まで考慮して治療方法を選ぶことが重要です。

しげ歯科・矯正歯科 水巻院では、現在のお口の状態とご希望を確認し、それぞれの治療方法の特徴、限界、費用、リスクをご説明したうえで治療計画をご提案します。

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